鎖から放たれた蝶々は美しく羽ばたく
「ゴルゴ。
車を出せ」

「かしこまりました」

神月さんに命じられ、車が静かに動きだす。

「停めてください!
電気を消し忘れただけですから!」

「ゴルゴ、停めろ」

車は一メートルも動かずに、再び停まる。

「本当に電気を消し忘れただけなんだな?」

「はい、そうです。
出るとき、確認しなかったから……」

嘘。
ちゃんと電気は消した。
それを神月さんも見ていた。
なのに私は、こんな嘘を突き通そうとしている。

「誰かがいる、というわけじゃないんだな?」

びくん、と身体が反応した。

「……そんなわけ、あるはずないじゃないですか。
私に可愛いなんてつきまとうのは、神月さんくらいですよ」

視線を、上げられない。
きっといまだに私の手を押さえている彼には、私が嘘をついているなんて見抜かれている。

「……わかった」

ゆっくりと彼の手が離れる。
カチリと音がして、顔を上げた。

「今日は楽しかった。
また、連絡する」

彼が車を降り、ドアを押さえて立つ。

「あっ」

やっと状況を把握し、急いでシートベルトを外して車を降りた。
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