神隠

神隠

-神隠1-

ウチの学校は人が少ない。
しかも、1つの校舎で小中学校を
兼ねている…

こんな山奥の村で…
人はどんどん減っていく。

私が大人になったら、
この村は…この学校は
どうなっているのだろう?

有希の席は廊下側の一番後。
中学一年はこの教室にいるだけ。
2年と3年も教室1つずつ。
人数は20人にも満たない。

小中学生合わせて50人いないのだ。

黒板の側で男子がふざけている。
だが、ボーッとしている有希には
会話が耳に入ってこない。

頬杖をついたまま、
午後の陽射しが入る窓をみている。

窓際でも、
帰らないでお喋りしている
同級生たちがいる。

その中に彼、司和哉がいた。
背はそんなに高くないが、
足が早くて頭がいい。
同級生の男子の中では落ち着いていて、
ちょっとクールな感じだ。

女子にも人気がある…
と行ってもクラスの女子は
自分を入れて7人しかいないが。

有希の席から、
司達が話している声は
はっきりとは届かない。

有希はボーッと司を目で追った。
司は自分からガンガン話す
タイプではない。

仲間に加わってはいるが、
どちらかというと控え目な感じだ。
でも、男子だって
全部で9人しかいないのだが。

そのままボーッとしていると、
仲のいい佳奈が寄ってきた。

「司みてるの?」

そう言って意地悪く笑う。
佳奈は有希から見てもかわいい。
短い髪がボーイッシュで、
ちょっと活発な感じだ。

「やめて、そんなんじゃ…」

実際、クラスの男子だけでなく
先輩達を見ても恋愛感情は
湧かなかった。

どっちかと言うと…
仲良くしながら自然に
そういう関係になるのがいい。

有希はそう思っていた。
それは佳奈も知っている。

二人は揃って窓際の司をみる。

「実際、ちょっといいよね。司」

腕組みして、
佳奈は値踏みするように
みつめている。

「別にここから選ばなくても」

有希がそう言うと、
佳奈は視線を戻して笑った。

「たしかに」

佳奈とは学校に上がる前からの
幼なじみだ、家も近い。

突然佳奈は顔を近づけきた。

「それよりさ、この後旧校舎いかない?」

「…なんで?」

有希たちの学校には敷地内に
もう一つ、使われてない校舎がある。
そんなに古い校舎ではないが、
空調とか教室内の設備が古いので
新しい校舎を建てたのだ。

旧校舎は何か別の事に再利用
されるらしいと聞いた。
もしかしたら取壊すのかもしれない。

「3年の先輩がみたって話だよ」

佳奈は何か、
とても面白い事の様に話す。

「よしなよ、なんか怖いよ」

「有希はいかないの?」

「いかない…なんか嫌だもん」


佳奈は有希の物憂げな態度に
何も怖じることなく続けてくる。

「司も来るかもよ?」

その言葉にハッとして、
有希はまじまじと佳奈を見上げた。

「満更でもないのね?」

それが有希にはそれが、
何か見透かされたようで嫌だった。

「このあとさ、男子達と行くからさ」

「ちょっと待っててよ」

佳奈はそう言って黒板側の
男子達を見る。

「なんか頼りないね」

有希がそう言うと佳奈は笑った。

「なんにもないよ」

確かに旧校舎は施錠もされていないし、
使われていないと言っても、
教室として使用してないだけで、
倉庫としては使われている筈だ。
電気も水道もきている。
先生も巡回しているし。

その時、旧校舎を探検する
メンバーの募集が始まって、
佳奈は手を振ると黒板の方へ
小走りに行った。

黒板の側の同級生達が
わっと盛り上がって教室を出ていく。
その中に司がいないか、
有希は思わず目で追った。

司はそのグループにはいなかった。

窓際に視線を戻すと、
ちょっと難しい顔をした
司が旧校舎をみていた。
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