禁断の味はチョコレートのように



五分ほど歩いて着いたのはこぢんまりとしたレストラン。
入り口にはイタリアの国旗が掲げられ、大きなワイン樽が入り口脇に置いてある。
翔太にエスコートされ中に入るとすぐに若い女性が来て、奥の半個室のような席に案内された。

大きな窓側のオープンな席と、ついたてを挟んだ壁際には三個ほど半個室のテーブル席は落ち着いた雰囲気。
よくある騒がしいイタリアンの店では無くここのエリアは静かさを売りにしている。

「どれも美味しいんだけどね、アクアパッツァや自家製のペンネを使った料理もお勧め」

「確かにどれも気になりますね」

「シェアして良いならいくつか取ろうか」

はい、と杏はその提案に答え翔太は軽めの赤ワインのボトルも注文する。

「お酒、実はいける口でしょ?」

「状況によるかな」

杏が笑って答えれば、二人の前にあるワインのグラスを持って乾杯した。
気がつけば杏も言葉遣いが砕ける回数の方が増えている。

「あー、しみる」

ワインを飲んで翔太が目を瞑りながら言うので杏は吹きだした。

「おっさんくさいって思ってるんでしょ」

「言われたことあるんですか?」

「会社で椅子から立ち上がるときにどっこいしょ、って言ったら部下達から笑われてね。
自分は意識してなかったけれど、おっさんみたいですね、と言われて少なからずショックだったよ」

「まだ34歳なのに」

「ほんと。まぁ男は40からが勝負だよ。
髪の毛、下っ腹が出る、色々と別れ道さ」

大げさに両手を挙げて悲しむ素振りを翔太がして、杏はクスクス笑う。
出てくる前菜などを味わいながら、あまり人目の着かない席は二人の関係には居心地の良い場所だった。

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