禁断の味はチョコレートのように
「杏」
「私、怖い」
「何が怖い?」
「貴方といるのが。
でも、離れたくない自分もいて怖い」
酒が引き出した本音なのだろう、杏は翔太の背中に頬をつけながら呟くように言った。
それを聞き、翔太は杏の腕をそっと外して身体を回転させると、正面から杏を抱きしめた。
「嬉しいね、甘えてくれて。
今度はもっと時間を取ろう。
君と一緒に朝を迎えたい。
その時はもっと君を甘えさせてあげる」
くい、と翔太は杏の顎に手をかけて口づけた。
酒が回り、朦朧としている杏は一瞬逃げかけたが、おずおずと背中に手を回す。
電気のついていない玄関でキスは深くなっていき、杏はまるでチョコレートを味わうように甘さが身体に広がる気がしていた。
酔いと息苦しさで杏がずるりと落ちそうになるのを、翔太が支えて床に座らせた。
「何とも甘いキスだった。
約束だよ、今度はもっと杏を味わわせて」
鍵はキチンを閉めるんだよ、と翔太は何度も言って部屋を出た。
ガチャリとガキの締まる音を聞き、翔太はマンションの廊下を歩き出す。
自分の唇に指を当てる。
先ほどまで味わった、癖になるような甘い口づけを思い出す。
その口元は楽しげに弧を描いていた。