禁断の味はチョコレートのように
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それから翔太が忙しく会う時間がなかなか取れなくても、翔太はまめに連絡を寄こし、数日おきに電話をした。
無理をしなくてもと言う杏に、翔太は仕事を頑張ってるんだ、君の声が聞きたいという我が侭くらい許して欲しいと言う。
そんな言葉、杏はかつての交際相手から聞いたことは無い。
もちろん、会いたい、好きだよと言う言葉は何度も貰った。
それもしばらくすれば消えていく。
杏自身、これはまともではない付き合いだからこそ甘くいられていると頭ではわかっているのにこの楽しさには抗えない。
求められている。
ずっと男性からの自信を無くしていた杏にとっては禁断の果実の香りを嗅いでいるような甘さを感じていた。
十分だけという杏の通話を終え、翔太は会社の会議室で一人椅子の背にもたれかかる。
時間は十一時過ぎ、もう会社には翔太以外誰もいない。
翔太が仕事で忙しいのは事実だったが、わざと杏をじらしていた。
じらせば果実はより甘くなる。
その相手もその香りに我慢できなくなっていく。
向こうも欲しいと思わせられないなど、単に自分の力不足だ。
「そろそろ良いかな」
前回会ってキスしてからそろそろ一ヶ月。
スマートフォンをもてあそびながら、翔太はスケジュールを思い出していた。