禁断の味はチョコレートのように
連れてこられたのはまた違う高級ホテルのレストラン。
来ている客層で、これだけお洒落しなくてはならないことを杏は知る。
ドレスコードがあるのか、男性は全員ジャケットを着用し、女性もフォーマルな服装。
スリーピースのスーツに、いつの間にか翔太の胸ポケットにはチーフが入れられていた。
窓際の席に案内され、杏は二階分までありそうな一面の窓から見える夜景に感嘆の声を漏らした。
「晴れて良かった。雨ならまだ良いんだけど曇りだと目も当てられなくてね」
そういう言葉を聞く度に、杏はここも女性と来たことがあるのだろうと思ってしまう。
先のだってそうだ、店側も慣れているのだろう、それは杏の他にも翔太がここで女性に同じ事をしたと想像するのは簡単だった。
『これが普通の交際だったら、元カノとのことで私も不満を言える。
だけどこの付き合いはあくまで不倫、それも彼は楽しんでいる。
私は彼のきまぐれに選ばれただけで、これだけのことをされて何か文句を言える立場じゃ無い』
わかっているのだ、彼を好きになってはいけないことは。
なのにここまで優しくされ、何も感じるなと言うのが無理だろう。
杏はまだ身体を許していない今なら戻れると思いつつ、この食事だけでもと言い訳してしまっていた。
「どうしたの?疲れたかな」
心配げな翔太に杏は笑顔を作った。
それの理由を翔太はなんとなく勘づいていた。
だがそれも作戦のうち。
杏が自分を男として意識し、この甘さに酔って貰わなければならない。
理性と欲望の狭間で揺れる様は、女性の美しさ。
そう思う翔太には、杏はまさに理想だった。