禁断の味はチョコレートのように
「確かに慣れない事に疲れました。
後で全て返却ですよね?」
心配そうな杏に翔太は楽しげに笑う。
「全て買った物だよ。
男が女性に服を買う理由、聞いたことがあるだろう?」
杏の顔がこの落ち着いた明るさの店内でもわかるほど、頬が赤くなっているのがわかり翔太は笑った。
『食事の後のデザートが楽しみだ』
アミューズを終え前菜が運ばれる。
杏の緊張をほぐすため、翔太は笑顔で主張先での話をし始めた。
酒の量を控えていた杏は、自分の理性がまだ残っていることに安堵していた。
ここで帰らなくては。
泊まる約束をしていたって、分岐点は完全にここだ。
「出張先で美味しいチョコレートを買ってきたんだ。
これが入手困難なシロモノでね、杏に食べさせたくて開店前から並んでしまったよ。
おかげで仕事先の人から、何やってるんですかと笑われて」
「社長さんがそんなことしてたら驚くでしょう」
いつものように既に会計は翔太が済ませ、杏は礼を言う。
「チョコレートは下に取ってる部屋に置いてあるんだ」
来た。
杏は言わなければと思うのに、口が動かない。
それをわかって翔太は優しい笑みを浮かべた。
「二人を知るにはゆっくり話すのは大切なことじゃないかな。
甘い物でも食べながらお互いのことを話そう。
俺もまだ飲み足りなくてね。杏もそうでしょ?
杏がまた酔って倒れられても困るし」
前回迷惑をかけてしまったこと、そしてこの後を考え杏は飲む量をセーブしていた。
全部見抜かれている。
そして熱いまなざしが自分に向けられていることが、杏にとってはたまらなく嬉しいことだった。
女として自分を求めてくれることがこんなにも嬉しいことだなんて。
『利奈さんが言う意味がわかるな』
杏は翔太の方を見ずに頷いた。