禁断の味はチョコレートのように



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そんな関係が半年ほど続いたある日の事。
それは突然のことだった。

杏の会社に、とある企業のやり手広報部の女性が来ると総務部に連絡があった。
対応は営業部がするが、お茶出しを杏にして欲しいと営業部から電話があり、杏は何故自分が指名されたのかわからない。

『もしかして利奈さんが担当するのかな。
だから私にお願いしたのだろうか』

本人に確認したいが時間が無い。
杏は言われたとおり給湯室へ向かった。

会議室のドアをノックし声をかけて中に入る。
香水の香りがこの場所まで香ってきて、杏は顔をしかめそうになったのを我慢した。
中の明るい会議室のテーブルには上座に女性と男性がいて、下座には杏も知っている営業の男性が二人。

杏はいつも通りに上座の女性からお茶を出している書類の邪魔にならないように置くと、香水をつけた女性がちらりと杏を見て微笑む。
女の年齢がよくわからないが、隣の若い男性を引き連れている姿は様になっている。

長いまつげにしっかりされたメイク。つけ爪なのか長いその指先には煌めいた石がはめられている。
真っ白なスーツは政治家の女性などがよく着る物だが、スタイリッシュでオーダーメイドと思わせた。

杏は各自にお茶を配り終えると頭を下げてドアを静かに閉める。
視線が自分に向けられている事など杏は気付いていなかった。


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