禁断の味はチョコレートのように
会議室に行き呼吸を整えドアを叩く。
どうぞ、という声で杏はドアを開けた。
中で座っていた白いスーツの女がタブレットから顔を上げて立ち上がった。
ドアを閉め杏は、
「橋本様、何かご用と伺ったのですが」
「えぇ。まずはこちらに座って下さい、園田杏さん」
フルネームで呼ばれ杏の顔は強ばる。
きっと全てわかっている。
だがもしも鎌を掛けられているだけなら下手なことは話さない方が良い。
自分の行動で翔太の首を絞めることになると思うと、杏はそれだけはしたくないと思っていた。
テーブルを挟み前に座った杏に、橋本は名刺を渡した。
「初めまして、橋本愛です。翔太の妻、と言う方がわかりやすいかしら」
にっこりと余裕げに微笑む愛に対し、杏は必死に心を落ち着けようとする。
言い方からしてやはり全て知っているのだろう、杏はもう逃げる事は出来ない。
「初めまして、園田杏と申します」
下手に何か言うのを避けるため杏はそれだけの自己紹介にした。
「ふふ、そんなに怯えないで。
今翔太が可愛がっている女の子でしょう?
彼は趣味に没頭しているときはその趣味だけになるの。
今回は特に可愛がっているみたいだから私も気になっちゃって。
翔太って大人の余裕ぶっている割に、独占欲があるのよね。
こういうのが女は弱いってのをわかってやってるんでしょうけど」
きつい香水に、まったりとした声。
最後、綺麗な指先が自分の胸元を指さした。