禁断の味はチョコレートのように
ネックレスの事だ。
杏はそれすら気付かれていることに、もしかして夫婦で情報を共有しているのではと思ってきた。
お互いに今の趣味について話す、その趣味が不倫であったとしてもこの二人ならその内容を語り合いそうな気がして、杏は何を信じて良いのかわからなくなる。
「さっき対応した男性に聞いたんだけどね、あなた、ここのところ評判が良いそうよ?」
何を言っているのかわからず杏は戸惑いを浮かべた。
「翔太の育て方が良いんでしょうね。貴女の価値が上がっているって事。
言っておやりなさいな、会社でモテるんですよって。喜ぶわよ」
始終楽しげな愛に杏は翻弄されているが、足に力を入れ必死に自分を保っていた。
愛の本当の目的はわからない。
愛人と本妻が対峙していて、やはり圧倒的に余裕なのは本妻である愛。
それを見せつけられて、杏はただ唇を噛む。
そんな様子を見てから、愛は荷物をまとめて立ち上がる。
「園田さん、貴女、本当は商品企画部に行きたかったんですって?」
鞄に荷物を詰め終わった愛に突然そんなことを言われ、杏は間の抜けた顔をしてしまった。
「社内コンペ、どの部署からでも出せるのに、それもやらないの?」
杏は元々商品企画部に行きたかった。
この会社もここが出す商品が好きで入社試験を受けた。
だが杏は入社してからずっと総務部。一度も移動の話は無い。
社内の活性化がてら時々社内コンペをするのだが、杏にはそれに出す勇気が無かった。
そこで失敗し本当に商品企画部へ行く道が絶たれるのが怖かったからだ。