禁断の味はチョコレートのように
明らかに落ち込んでいる杏に、
「杏、勘違いしないしてるかもしれないけれど、彼女だって最初から今のようだったわけじゃ無い。
元々素質のある人だったから開花するのは早かったけれど。
君は君の良さがあって、俺はだからこそ君に決めた。
君は、必死に俺に相応しくあろうと頑張っていただろう?」
優しく翔太が声をかける。
杏は自分がしていたこと、思っていたことがこんなにも彼にはお見通しだったことに、悲しいよりも笑えてしまう。
不倫をしていてどこかではずっと怯えていた。
だが知らない世界、女としての成長を促され、もう28歳だと自分で自分にかけていた呪いがとけていくのは幸せだった。
いつかは終わりが来る、そんな事を思いつつも考えたくは無かったのに、こんな事が起きて杏はあの後ずっと考えていた。
「ねぇ翔太さん」
杏の問いかけに、ん?と翔太は言う。
「ここで関係を終えると私が言うと、寂しい?」
こう言えばきっと、寂しがっている気持ちを伝えながらも引き留めることは無いだろうと杏にはわかっていた。
だがやはり聞きたい。
聞かなければ終わりには出来ない。
翔太は隣にいる杏を引き寄せた。
「寂しいよ。
正直に言えば手放したくは無いし、せめて君が飽きるまで関係を続けたい。
いや君に相手が出来ても関係を続けて欲しいとすら思っている」
それは杏にとって予想外の返事だった。
「君が彼女に会ってわかったように、彼女は俺が誰かを愛でることは許容している。
今日のように直接会いにいったのは初めてだが。
それだけ、君は俺にとって今までのことは違うと感じたんだろう。
俺が言っていることは自分でも身勝手すぎることはわかっているよ。
だからもし俺が君の親友ならこう言うだろう、結婚できる可能性の無い男と遊んでいるより早く相手を探せってね」
杏はそれを聞き、結局彼の身勝手な願望と私に起きる事実を突きつけ、自分に選択させるよう迫っているのだと理解した。