禁断の味はチョコレートのように
ずるい人だ。
そんなの、わかっていたはずなのに。
そして、私もこんな事をしていたずるい人間だ。
「結局私に止めるよう決断させたいんだね」
「言っただろう、本音は君を手放したくないと。
でも真面目な人間なら俺から離れるように言うだろう。
それだけ君は素敵な女性になれているのだから」
カウントダウンだ。
杏に時計の針が動く音が聞こえる。
「私は、このダイヤモンドに相応しくなれた?」
貴方のくれたこの素晴らしいダイヤモンドをつけていられるように、貴方の側にいることが相応しいようにと心してきたことは意味があっただろうか。
「もちろんだ。だから手放したくないんだよ」
「嘘つき」
思わず杏はそう口にしていた。
気がつけば頬を涙が伝っている。
「貴方に、まだ独身の時に会いたかった」
「うん」
「そして貴方と何にも怯えない恋がしたかった」
「うん」
「出逢いたくなかった。
でも、出逢ったからこそきっと私は自分に少しは自信が持てたんだと思う。
だから翔太さん、感謝してる」
強がりも入っていた。
だが杏は笑顔を見せ、翔太は今までの余裕だった表情を崩し、その表情を見せないかのように杏を強く抱きしめた。