CROSS LOVELESS〜冷たい結婚とあたたかいあなた

目が覚めても蓮さんは離してくれず、私は彼に抱かれ続けて。
やがて陽射しが高くなるころ、話し声で2度目の目覚めを迎えた。 

「……ああ、わかった」

ベッドの脇にある有線の電話の受話器を置いた蓮さんは、小さく息を吐いた。

(今なら……帰れる)

そっとベッドから抜け出そうとしたのに、突然蓮さんから声をかけられた。

「……ちょうどいい。アンタもシャワーを浴びて支度しろ」
「えっ……」

ドサッ、とベッドの上に紙箱がいくつか置かれると、彼はさっさとベッドルームを出ていく。

(なに…何なの)

ムッとしながら箱を開けて、驚いた。
中に入っていたのは、薄いシフォン生地の水色のドレスに、アクセサリーとそれに合わせたパール色のエナメル靴にバッグ。

「これ……は?」
「着替えろ。今から出かける」

先にシャワーを浴びたらしい蓮さんは、すでにフォーマルスーツに袖を通している。普段のもっさりとダサい姿は、仮の姿と言うことがよくわかる。
玲さんもモデル並みの容姿だけど、なぜか蓮さんの方が美麗で凛々しく感じる。

よく鍛え上げた見事な身体も……。

(ば、馬鹿ね!……なにを思い出してるの…はしたない!)

あの腕の中で抱かれたんだ…と思うと、顔が熱くなる。恥ずかしくて死にそうだ。

「シャワー…浴びてきます」

赤くなる顔を見られたくなくて、小走りでバスルームに飛び込んだ。

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