年下男子は恋愛対象になりますか?
あれから数時間が経って、学園祭ライブ真っ只中。今日は東京郊外にある大学に来ていた。

いつものように美樹と会場に行って、ライブ仲間達と合流して、各自好きな場所で楽しんでいるところ。私の定位置は上手の壁側。

タオルを回すような盛り上がる曲が続いていた時、ぎゅうぎゅうに押されて苦しそうにしている女の子が視界に入ってきた。

どうしようか迷ったんだけど、近くに知り合いらしき人がいなそうだったから、隣まで移動して声をかける。

「大丈夫?後ろ行く?」

目が合ったあと軽く頷いてくれたので、周囲の人達にすみませんと謝りながら下がった。歩くにつれ、だんだんと余裕が出てくるスペース。

「すみません、ありがとうございます。助かりました」

広い場所まで来ると申し訳なさそうに頭を下げられた。睫毛長いのが印象的な、背が低めで可愛い高校生ぐらいの子。

「ううん。残りも楽しんでね」

ステージからは爆音が轟いていて、体育館全体が熱気に包まれている。さっきまでいた場所に戻るのを諦め、その子から離れた場所で見ることにした。好きなバンドだし、どの場所からでも楽しめる。

「お疲れー。由夏、あの子大丈夫だった?」

ライブ後最初に合流出来たのは、同じく上手側で見ていた弘樹。

「見てたんだ。うん、大丈夫そうだったよ」

気になって視線を移すと、その子と再び目が合った。何度か頭を下げられたので軽く手を振ってみる。

「由夏が男だったら惚れられたかもな。いや、そうじゃなくてもあり得るか」

「あはは、どうだろ」

「いやいや惚れられたらダメでしょ。隼人君絶対妬くって。で、どの子に惚れられたって?」

冗談を言い合っていたら、突然現れた美樹がそんなことを言ってきた。お願いだから話をややこしくしないで。
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