砂浜に描いたうたかたの夢
「私こそ……しつこく聞いてごめんなさい。家族って、お姉さん? 妹さん?」

「姉ちゃん。一花ちゃんと同じで、体型を気にしててさ」



初めて聞いた、彼の家庭事情。
3人姉弟の末っ子で、お姉さんの愚痴を1個上のお兄さんと一緒に聞いていたらしい。



「可愛い服を見つけても、毎回『体型カバーできないから私には無理』って言ってて。着たいのに我慢して、それで人生楽しいのかなって思ってた」

「そうだったんだ……」



優しい凪くんにしては少し鋭い言い方だけれど、的を射ている。


我慢ばかりの人生なんて、全然楽しくないし苦しいだけ。

だけど、大人になったら我慢する場面も増えるだろうから、そういう時こそ、自分を大切にしないと。

あれもこれもって、関係ないことにまで蓋をして、心の奥底に沈めちゃったら……。



「あとは、同じ部活の人かな」



凪くんの声でハッと我に返り、巡らせていた思考を止めた。



「部活してたんだ。初めて知った。何部?」

「水泳部と美術部。姉ちゃんよりも、こっちのほうが酷かったかも。耳にたこができるくらい毎週聞いてたから」
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