砂浜に描いたうたかたの夢
先程の彼と同じくらいの声量で返事をすると、やっぱりかと言わんばかりに、ふふっと笑われた。



「笑わないでよ……っ。凪くんは男の子で細いから分からないだろうけど、こっちは真剣なんだから……っ」



大声で言い放ちたい気持ちを抑え、震える声で言い返した。


楓に指摘されて、智には馬鹿にされて。クラスメイト数人にも『少しふっくらした?』と突っ込まれた。

1人ならまだしも、複数人が口を揃えて言ったんだ。相当変わったんだと思う。



「ごめんっ。そんなに悩んでたなんて知らなかった」



普段と違う声色と表情に焦ったのか、慌てて謝ってきた。



「家と学校で、何度も似たようなこと聞かされてたから、今回もそうなのかなって……。本当にごめん!」



再度謝ると、今度は腰を直角に曲げて頭を下げてきた。


……私、何やってるんだろう。

毎日時間を作って会ってくれる人に、お店の中で謝らせて。しかも悲しい顔にまでさせて。

悪いのは笑った凪くんのほうだけど、元は私が執拗に意見を求めたせいじゃないか。

それに、同年代とはいえ年上の人。距離感の件といい、礼儀なさすぎでしょ……。
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