砂浜に描いたうたかたの夢
大袈裟なくらい振るのは、顔を覗き込まれているから。
目が合ったら、それだけでまた涙が溢れ出してしまいそうだから。
こんなぐしゃぐしゃで汚い顔、凪くんに見られたくない。
なのに──。
「一花っ、俺の顔見て」
不意打ちで再び名前を呼ばれて、目を合わせてしまった。
「何があったの……?」
「っ……うぅっ……」
一昨日にも向けられた、吸い込まれそうな眼差し。
それは、私の涙腺を崩壊させる、安心感をまとった優しい眼差し。
凪くんの馬鹿……っ。女兄弟がいるくせに、どうして女心が分からないの……っ。
途端に感情が溢れ出し、再度涙が頬を伝う。
咄嗟に俯くと、背中を擦られているのを感じた。
触れているのか分からないくらいの、かすかな感覚。
それが凪くんの手だと分かると、さらに涙が溢れ出してきて。
口を手のひらで覆って嗚咽を漏らしたのだった。
◇
「少し、落ち着いた?」
「うん。ありがとう」
ひとしきり涙を流した後、近くの階段に腰を下ろした。
すっかり日が沈み、オレンジ色に染まっていた雲は東の空に消え、入れ替わるように夜が徐々に顔を出し始めている。
目が合ったら、それだけでまた涙が溢れ出してしまいそうだから。
こんなぐしゃぐしゃで汚い顔、凪くんに見られたくない。
なのに──。
「一花っ、俺の顔見て」
不意打ちで再び名前を呼ばれて、目を合わせてしまった。
「何があったの……?」
「っ……うぅっ……」
一昨日にも向けられた、吸い込まれそうな眼差し。
それは、私の涙腺を崩壊させる、安心感をまとった優しい眼差し。
凪くんの馬鹿……っ。女兄弟がいるくせに、どうして女心が分からないの……っ。
途端に感情が溢れ出し、再度涙が頬を伝う。
咄嗟に俯くと、背中を擦られているのを感じた。
触れているのか分からないくらいの、かすかな感覚。
それが凪くんの手だと分かると、さらに涙が溢れ出してきて。
口を手のひらで覆って嗚咽を漏らしたのだった。
◇
「少し、落ち着いた?」
「うん。ありがとう」
ひとしきり涙を流した後、近くの階段に腰を下ろした。
すっかり日が沈み、オレンジ色に染まっていた雲は東の空に消え、入れ替わるように夜が徐々に顔を出し始めている。