砂浜に描いたうたかたの夢
今日は満月だったっけ。もうすぐあの空からお月様が出てくるのかな。


──ブーッ、ブーッ。


空を眺めていると、ポケットに入れたスマホが振動し始めた。



「出なくて……いいの?」

「うん」



画面に表示された名前を見た瞬間、着信拒否ボタンを押して、再びポケットの中へ。

酔っぱらった人間なんかと電話なんてしたくない。



「一花ちゃん」

「ん?」

「……もしかして、家族と喧嘩した?」

「…………うん」



涙の原因をピンポイントで当ててきた凪くん。

やっぱりこの人、読心術習ってるんじゃない?
いや、さっきのでなんとなく察しがついたのかも。



「実は……長寿祝いのことで、お父さんと喧嘩したんだ」



涙が収まるまで傍にいてくれた彼に、小一時間ほど前に起こった出来事を簡潔に話した。



「コップが割れるって……大丈夫だった? 怪我してない?」

「大丈夫。……まぁ、心は粉々になってるけどね」



自虐的に笑って返したけれど、笑えるレベルではなかったようで。
本当に心が壊れたのではないかと、逆に心配を増幅させてしまった。
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