砂浜に描いたうたかたの夢
ナスをくっつけながら心配する智。


天国から私達がいる世界までどのくらいの距離があるのかは分からないけど、長時間の運転は疲れるよね。ましてやお年寄りに。

新幹線や飛行機の座席のほうが、足腰に優しいと思うけどなぁ。



「自転車は論外だし、他に運転できるのって戦闘機くらいじゃね?」

「だよね! 思い出深いし速いし!」



目を合わせ、うんうんと頷く。

昔の写真を見せてもらった時に教えてくれた情報によると、若い頃は戦闘機を操縦していたんだとか。

慣れ親しんだ原付もいいかもしれないけど、速度に関しては断然そっちのほうが上だし。何より、愛しの妻と子孫達に早く会えそう。



「戦闘機……確かにそれも思い出深いが、いい思い出と言えるかどうかは……」



2人で話を進めていると、祖父がおもむろに口を開いた。

気まずそうな苦い笑み。その瞬間、私達は失言したことに気づいた。



「ごめん……」

「ごめんなさい……」

「いやいや。おじいちゃんこそ、説明不足でごめんね」
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