砂浜に描いたうたかたの夢
こいつの言う通り、初日と昨日を除いた3日間は部屋着で出かけていた。


だけど今は、紺色のパーカーにワンピースタイプの赤い水着。おまけに麦わら帽子には、水着の色とお揃いの花飾り付き。

『前髪切った』『リップの色変えた』などの微々たる変化に鈍い人間でも、これほど系統が違えばさすがに気づくだろう。


帽子の中で冷や汗が額を伝っているが、ツッコまれることは予想済み。事前に考えておいた台詞を返す。



「昨日、新しいの買ったから、着たくって」

「あー、そういえば何か買ってたな。でも、体型気にしてるわりには露出高くね?」



上手くいったと思いきや、追及されてしまい、またも引き戸を開ける手が止まった。


この野郎……っ! どうして今日に限って……!

そんなに私がスカート穿いてるのが珍しい⁉ それとも何⁉ 彼女と服の系統が似てるとか⁉

私が悩んでること知ってるならまじまじ見るなよ!



「いいでしょ別にっ。智みたいにいじる人いないんだから。じゃあね」
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