砂浜に描いたうたかたの夢
祖父母の部屋を後にし、まずは荷物部屋に移動。

昨夜洗濯しておいた水着とパーカーを持って、トイレに駆け込んで着替える。

素っ裸の時に誰かが部屋に入ってきたら困るからね。


着替えた後は忍び足で洗面所に向かい、耳下で2つに結んでいた髪の毛を1度ほどいてみつあみに。

荷物部屋に戻り、リュックサックと帽子を持って玄関へ。


ふぅ、誰も見つからずに済んだ。

安堵の溜め息をついてスニーカーを履く。



「あ、一花」



すると、背後で若々しい声が響き、心臓と肩が激しく揺れた。



「また今日もネタ探し?」

「う、うん」



なんで最後の最後で智が出てくるんだよぉぉ。外出するのは毎日のことなんだからいちいち声かけんなぁぁ。

笑顔の裏で叫びつつ、そそくさと立ち上がって引き戸に手を伸ばす。



「ふーん、にしては随分オシャレだな。いつもは部屋着なのに」



しかし、鋭く棘のある返答によって阻止された。

恐る恐る振り向くと、足先から頭まで全身舐め回すように見ている。
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