砂浜に描いたうたかたの夢
そう叫びたい気持ちを抑えて、動揺する心を隠すように早口で言い残し、外に出た。


危なかった……。あと少し近づかれてたら水着ってバレるところだった。


帽子をかぶり直して早歩きで出発する。

今日も午後から外出すると伝えてはいるけれど、「海水浴に行く」とは伝えていない。


理由は単純。凪くんとの密会がバレる恐れがあるから。


もし誰かがうっかり口を滑らせて、その話が智の耳に入ってしまったら、「1人で海水浴? さみしー」って、意地の悪いあいつなら嘲笑する。


想像しただけでもムカつくが、それだけならまだマシ。問題は「可哀想だから付き添ってやるよ」と言われた場合。


断っても強引に参加してきそうだし、撒いても「お前がナンパされないか心配で様子を見に来た」とか言って、こっそり着いてくる可能性もなくはない。


そんなあいつに、凪くんと一緒にいるところを見られてしまったら……光の速さでみんなに言いふらして、昨日以上に大騒ぎになると思う。

なので、こそこそと準備したというわけだ。
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