砂浜に描いたうたかたの夢
というのも、今日からお留守番しているワンちゃん達、みんな雷が苦手なのだそう。



「それは心配だね。ケージはみんな同じ部屋に置いてあるの?」

「うん。横並びに置いてるから、心細さはないと思うんだけど……」



凪くんが心配しているのは、愛犬の心と身の安全。


昨夜、父が観ていたテレビで、犬のお留守番の様子が流れていた。

最初こそおとなしくベッドで寝ていたけれど……長くは続かず。

お皿をひっくり返しては、トイレシートを噛みちぎって。しまいにはベッドまでも振り回して。1時間が経つ頃には、ケージの中がぐちゃぐちゃになっていた。


テレビに出ていたのは小型犬だったけど、凪くんの犬達は全員中型犬。体が大きいほど、数が多いほど、暴れ出すと激しい。

ひいおじいさんとおばあさんの大切な家族でもあるから、万が一のことがあったらいけない。



「分かった。なら明日は早めに集合する?」

「そうしてもらえると助かる。ありがとう」



手を合わせて何度も頭を下げている。

こんなにも責任感が強くて優しい人なのに……。

厄介だなと思ってしまった30分前の自分に、強烈なビンタをお見舞いしてやりたくなった。
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