砂浜に描いたうたかたの夢
彼の目が三日月のように緩やかな弧を描いた。


出会った浅瀬、再会した波打ち際。
奇跡が起きた階段、初めて絵を見せた砂浜、涙を流した高台。


1つ1つ回想しながら、思い出が詰まった海をもう1度目に焼きつけた。







しばらく絶景を楽しんだ後、元いた海岸に戻った私達。時間が来るまで砂浜に座って談笑することに。



「ねぇ、あそこ、何か浮いてない?」



話の途中で凪くんが海面を指差した。視線をたどると、打ち寄せる波に乗って細長い物が近づいてきている。

正体を考えている間に謎の物体は波打ち際に漂流。目を凝らしながら恐る恐る拾った。



「これは……枝?」

「だね。先月末雨が酷かったから、その時に折れたやつが流れてきたのかも」

「そんなに酷かったの? っていうか詳しいね」

「いや、詳しいもなにも、先月からこっちにいるし」

「あ、そうだったね」



水に濡れて焦げ茶色になった枝を眺める。

この枝、少し大きいけど、そこそこ太さがあって持ちやすい。
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