砂浜に描いたうたかたの夢
「絵を描くのにちょうど良さそう」

「確かに。一緒に描く? ここで」

「いいの?」

「うん。他に流れ着いてるやつがあるか探してくる」



そう言って立ち上がり、枝を探しに行った。


オススメスポットを教えてもらって、ためになる助言までくれて。なんだか今日はツイてる気がする。昨日たっぷり悲しんだからかな?


何かネタになる物はないかと周りを見渡していると、遠くの砂浜で写真を撮る、派手な髪色をした男女2人組を見つけた。

辺りに人が少ないのをいいことに、熱い抱擁を交わしている。



「……そうだ」



なぜかその姿にピンときて、砂浜を一筆書きでなぞった。

次に、お互いの名前を書いて……。



「できた……!」



ぎごちない手つきで書くこと数十秒。相合傘が完成した。


以前凪くんが私と智をカップルだと見間違えたように、私達も傍から見たら若者カップル。

別に、特に意味はなくて。ただ遊び心で描いただけ。

例えるなら、推しの名前と自分の名前の相性を調べてみた感覚に近い。決して凪くんに下心があるわけでは……。
< 203 / 322 >

この作品をシェア

pagetop