砂浜に描いたうたかたの夢
逐一確認するように尋ねる伯母に気圧されて、徐々に声が小さくなっていく。

ジリジリと迫ってくるその顔には「嘘でしょ⁉」と書かれており、まるで信じられないという反応。

智にも似たようなことを話して驚かれたけど、ここまで血眼になっていない。



「一花ちゃん……本当なの?」

「本当だよっ。最近はあまりしないけど、お母さんの代わりにお弁当作ってくれた時もあったんだよ」



祖母も、お皿を持ったまま目を丸く開けて立ち尽くしている。



「そっか……あのクニユキが、お弁当を……」

「お母さん、大丈夫?」



丸くなった目にじわじわと涙が溜まり、溢れて頬を伝った。


男子組の昼食の心配はしなくていいって言っただけなのに。なぜか台所には、子の成長を喜ぶ感動のムードが漂っている。

お父さんも、おじいちゃんみたいに料理が苦手だったのかな。だけど、今も涙を流してしまうくらい酷いありさまだったの……?


伯母にもらったティッシュで涙を拭う祖母を眺めていると、後方で曇りガラスの引き戸が開いた。



「母さーん、麦茶あるー? ……って、どうしたの」
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