砂浜に描いたうたかたの夢
大好物が待っているのに、大嫌いなやつに足止めされて動けない。

しがみつく力を強めていると、「もう、しょうがないなぁ」と呆れた声が聞こえて、体を離された。



「これで我慢してくれる?」



背中から手は離れてしまったけれど、代わりにこっちを掴めと言わんばかりに、私の手を左腕に。



「いいの?」

「動けなくなるよりかはマシだから」

「ありがとう……っ!」



嬉しくなって、さっき以上にギュッとしがみついた。



「ちょ、ちょっと! 近すぎるよ!」

「ご、ごめん! これくらいならいい?」

「いや、それもちょっと……とりあえず、胸離してもらえる?」



たどたどしくお願いしてきた凪くん。

顔を覗き込むと、茹でダコ並みに真っ赤。耳に至っては、熟れすぎたりんごみたいに濃い赤に染まっている。



「……凪くんもちゃんと男の子だったんだね」

「そうだよ。健全な男子高校生なんだから……って、何押しつけてんの」

「あははっ、照れてる〜。可愛い〜」

「馬鹿っ。年上をからかうんじゃないっ」

「うわっ」
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