砂浜に描いたうたかたの夢
調子に乗ってリズムを取るように押しつけていたら、デコピンで反撃された。



「ファンに向かって馬鹿って言うなんて。しかも暴力まで」

「いやそっちだって。俺のこと散々貶したでしょ。帽子でも叩いたくせに」

「っ……でも、年上なのを利用して沢山からかってきたのは凪くんだよっ」

「あ! おいっ!」



ムスッと頬を膨らませ、もう1度腕に抱きついた。


縁側で私を真っ赤にさせたお返しだよっ。そもそも先に腕を回したのは凪くんなんだからねっ。


照れた顔を隠すように背けて歩く凪くんに、「言葉には気をつけるんだよ!」と心の中で偉そうに物申した。


坂を下り終えると、開けた場所に出た。

変わらず木々が生い茂っているけれど、この辺りは数が少なく、先程よりもほんの僅かだが明るい。


出口が近づいているのを感じてホッとする反面、同時に、凪くんとのお別れの時間も迫ってきていて、一気に寂しさが襲ってきた。

お肉は食べたいけど……もう少しだけ一緒にいたいな。



「──……かー!」
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