砂浜に描いたうたかたの夢
瞳を輝かせて「早く早く!」と急かす智を落ち着かせ、絵日記帳を取りに別室へ。


色は塗っているものの、画質が高い写真と比べてそこまでハッキリしていないため、全体的な雰囲気を確認する程度なら大丈夫だろう。


日記部分を下敷きで隠し、砂浜に座る凪くんを描いたページを広げてテーブルの上に置いた。



「おお〜っ、確かにイケメンだな! 塩顔の美少年って感じ! 年は、20代くらい?」

「ううん。2つ上の高校生だよ」

「へぇ、大人っぽいな! 学校でめちゃめちゃモテてそう。あとこの白い犬可愛い〜」



瞳孔を開いてはしゃぐ姿はまるで小学生。ジョニーの隣に描いたシロくんを指差し、「これ写真撮っていい?」とまで言い出した。

呆れつつも了承し、周りに目を向ける。


やけに静かだなと思ったら……曾祖母を除いた全員、目がまん丸。

長寿祝いの料理を見せた時以上に、絶句して微動だにしない。


まさか、また何かやらかした? でも、人物と動物だし。特にタブー要素はないと思うんだけど……。



「……ユキエ?」



異様な空気に困惑していると、曾祖母が沈黙を破った。
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