砂浜に描いたうたかたの夢
タップしてみたら、送信者は顧問の淡井先生。どうやら奥さんが体調を崩してしまい、心配なので今日は直帰するとのこと。


マジか。でも、病人を長い間1人にはできないよな。先生の家、奥さんと2人暮らしだから子どもいないし。



「それなら……」



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──



「あれ⁉ 浅浜先輩じゃないですか!」

「今日は水泳部じゃなかったんですか⁉」

「うん。急に休みになって。ちょっと覗きに来た」



放課後。急遽部活が休みになって時間が空いたため、代わりに美術室に足を運んだ。

俺が来るとは思っていなかったのか、出迎えてくれた後輩の女の子の目が丸くなっている。

他の部員達も、一見集中しているが、顔は少し強張っており、戸惑いの色を隠せていない。


毎週火曜日にしか来ない人間が休日明けに来たら、そりゃ誰だってビックリするよな。



「何か手伝えることある? 今日道具持ってきてないからさ」

「いいんですか⁉ それなら、絵のモデルになっていただけませんか? ちょうど今からデッサンしようと思ってたところなので!」

「了解。どんなポーズ取ればいい? 海老反りとか?」

「いえいえ! 座ってるだけで大丈夫ですよ!」
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