砂浜に描いたうたかたの夢
「よし、元気出すために、久々に作るか」



善は急げ。保存しておいたレシピの写真を捜し、材料を確認。

食事を済ませた後、明日の夕食に作れないかと相談した。


口答えをしたばかりだったからダメ元だったけど……なんと奇跡的にオッケー。


その翌日、美術部の活動を少し早く切り上げて帰宅し、母と祖父と3人で作った。


姉には『カロリー高そう』と文句を言われたものの、父と兄には大好評で、見事完食。

もちろん自分も完食。おかわりもして、もったいないからと、食べ残した姉の分もお腹に入れた。


これで今月末までは乗り切れそうだ。

そう安心していたのだが──自分でも気づかないうちに、相当疲れが溜まっていたようで。

2週間はおろか、1週間も保たなかった。



火曜日の放課後。

部室奥の窓際にイーゼルを立て、見本の写真を参考にキャンバスに鉛筆を走らせる。


しかし……なかなか満足のいく線が描けない。

描いては消しての繰り返しで、次第に苛立ちが募る。
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