砂浜に描いたうたかたの夢
必死に抑えて、なんとか花びらを描き上げた。

のだが……我慢しすぎたためか、変に力が入り、茎に移った際、全く関係ない場所に線がついた。



「……あぁっ! もう!」



堪忍袋の緒が切れ、殴り書きするように鉛筆で絵を塗りつぶした。


……しまった。


我に返った時にはもう遅く。

恐る恐る周りを見渡すと、部員のほとんどがこっちに目を向けていた。



「浅浜くん、大丈夫?」

「……はい。すみません」



顧問の三木先生が心配そうな顔を浮かべて近寄ってきた。


はぁー……最悪。ここ、学校なのに。

周りに誰もいないならまだしも、部室で、しかも後輩と先生がいる前でブチギレるって。先輩失格だろ……。


謝罪後、作業を再開したものの、場の空気を乱してしまったという罪悪感がどうしても拭えず。

「体調が優れない」と嘘をつき、1時間が経過したところで早退させてもらった。


だがしかし……回復どころか、日を追うごとに悪化していった。
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