砂浜に描いたうたかたの夢
信号が青に変わった。歩き出すと、隣から呆れたような溜め息が漏れた。



「お前と鋼太郎の真面目は全くもって別物だ」

「違うの?」

「全然違う。あいつは人にも自分にも厳しいタイプ。でも凪は、自分に厳しく人に優しいタイプ。人として素晴らしいのかもしれないけど、そのうち精神蝕まれて心死ぬぞ」



またも直球が飛んできて、今度は頭に直撃。

心が死ぬ⁉ 俺このままじゃ、うつ病まっしぐら⁉



「DMも。結局は迷惑メールと変わりねーんだから、いちいち律儀に返信するな。ってか、水関連の仕事に決めたんじゃねーの?」

「……最初はな」



中学時代──水泳教室と美術部の活動を両立していて、将来どっちの道に進むか迷っていた。


部活で毎年結果を残していたから、当時はかなり悩んだのだけれど……出した答えは、『水泳は水場じゃないとできないが、絵はどこでも描ける』。

結果、絵は趣味で続けることにし、高校は運動部が盛んな学校を選んだ。


ただ、毎日練習があるわけではなかったため、休日の火曜日は美術部で絵を描き、バランスを取ることに。

他の文化部と比べて自由度が高かったので、かけ持ちしていても楽しく活動ができていた。
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