砂浜に描いたうたかたの夢
「そうか。だが、暗い中、1人で出歩かせるわけには……智くん、着いていってあげてくれないかい?」

「えー、なんで俺が」

「お願いします!」



手を合わせて懇願するも、案の定渋っている。

面倒なのは分かってる。だけど、今頼れるのは智しかいないんだ。


粘りに粘った結果、明日の朝、好物のだし巻き卵を作るという条件で了承してもらった。



「あまり離れるなよ」

「分かってるって」



スマホのライトで足元を照らし、階段を下りて海岸へ。



「わぁ、綺麗……!」



見上げると、視界いっぱいに満天の星空が広がっていた。

街灯が少ないため、小さな星も肉眼でハッキリと確認できる。


海と同様、地元だったら絶対見られない景色。眺めれば眺めるほど、神秘的でとても美しい。


恍惚とした表情で、1枚ずつ撮影していく。

すると……。



「はいもしもし。……時間? うん、大丈夫だよ」



隣から、先程とは打って変わった優しい声が聞こえてきた。

声色違いすぎ……あと顔も。一瞬で彼女って分かっちゃった。
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