彦星さまは会いたくてたまらない


「ねぇ、彦ちゃん」



「だから、先生!」



「これだけは
 知っておいて欲しいんだ」



「何?」



「衣織ちゃん

 毎年七夕の夜はね

 空を見上げて

 泣きそうな顔で
 必死に願ってるんだよ」




「……」




「僕が彦星の親友だって
 今でも彼女は知らないし

 衣織ちゃんの心の中を
 教えてもらったことはないけど

 短冊を見れば、願いは
 一目瞭然だからね」



「毎年
 なんて書いてあったんだ?」

 姫野の短冊に……




「彦星さまに
 会えますようにって。

 幼稚園から去年まで
 ずっと同じ願いごとなの」



「……」


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