彦星さまは会いたくてたまらない



「彦星に会いたくて辛いのに
 その辛さを僕には見せないの。

 七夕で自分の願いが叶わなくても
 願いが叶わなかった
 友達の背中をさする子だよ?

 いい子過ぎ。可愛すぎ。

 ほんと……大好き」






凛空はうつむき

痛々しい瞳を揺らしている。



そんな彼に

なんて言葉をかけていいか

わからない。




『俺は生徒には手を出さない。
 前世の記憶も全くない。

 だから、俺のことは気にせず
 姫野と仲良くやって』



大人として、教師として

そう伝えるべきだよな?




頭では

わかっているんだけど……



俺の口は頑固な貝のように

全く開こうとしない。


< 97 / 199 >

この作品をシェア

pagetop