初恋の人
「康ちゃんごめんね。せっかくの休みなのに」

「せっかくの休みだから来たんだよ。結愛、ちゃんと食べてるかい?」

「うん。食べてるよ」

「学校は?」

「ちゃんと行ってるよ」

「美智子さんはどう?」

「ママは……」

 結愛は少し言い淀んでから続けた。

「少し落ち着いたかな。ママ、本当に毎日泣いてばっかりだったの。私まで泣いちゃうと、ママがもっと悲しんじゃうと思うから、なるべくママの前では泣かないようにしてるよ。早く立ち直らないとね」

 結愛は小さく笑い、気丈に振る舞った。

「結愛? 悲しい時は泣けばいいんだよ。我慢してたら、結愛の悲しみはなくなるのかい?」

 結愛は言葉を詰まらせた。

「美智子さんは結愛の母親なんだから、気を遣うことなんてないんだよ。二人で思いっきり泣けばいい。悲しみの感情を表に出すことで、少しずつ心が軽くなっていくんだと思うよ。悲しみが癒えるには時間がかかって当然なんだから。泣きたいだけ泣いてゆっくり受け入れていけばいいんだよ」

 堰を切ったように、結愛の目から次々と涙が溢れ、それを見つめる康史の目からも、涙がこぼれ落ちた。


 そうして結愛は徐々に春樹の死を受け入れ、日常を取り戻していった。
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