熱く甘く溶かして

 それに気付いたのか、恭介は智絵里の方を向くと、彼女の髪を撫でる。

「たぶん今までよりは近くなるよ。だって俺はもっと近付きたいし、智絵里にもそう思って欲しいから。でもそれはおかしなことでもないし、恥ずかしいことでもない。好きなら正常なことだよ」

 恭介って本当に私を安心させるのが上手。私が恭介に触れたいっていう気持ちが普通なんだと思える。

「恭介……手を握ってみてくれる?」

 智絵里が言うと、恭介は優しく笑って彼女の手に指を絡ませる。まるで全神経が手にあるんじゃないかと思うくらい、彼の指の動きがリアルに感じる。

「大丈夫? 怖くない?」
「うん……不思議だね。恭介は大丈夫みたい……」

 恭介は智絵里の指に口づける。一本一本、念入りに。なんて気持ちいいの……。

「恭介……かなり遊んでたでしょ。上手過ぎる……」

 智絵里が頬を膨らませてそんなことを言うものだから、恭介は思わず吹き出す。

「ヤバいなぁ。昨日まで友達だったのに、こんなに簡単に彼女になるんだなぁ。俺おかしくなりそう」
「なっ……変なこと言わないでよ⁈」
「俺の場合、今までの経験は智絵里に再会するためのものだったのかもな……。愛情表現だっていろいろあるからさ、これからゆっくりめいっぱい愛していくよ」

 自分から手放してしまったのに、手元に戻ってくると、こんなにも大切なものだったことに気付かされる。

「恭介……ごめんね……ありがとう」
「わかれば宜しい」

 私を見つけてくれてありがとう。智絵里は心からそう思った。
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