熱く甘く溶かして

「最低……! こんなもの……」
「脅しの材料には丁度いいだろ? これを篠田やその親とかに見られたくないならさ……わかるだろ?」
「卑怯者!」
「頭を使えよ。これからの人生のことを考えたら、言うことを聞いておくのが賢いやり方だろ?」

 こいつはあの日だけでなく、これから先の私までをもどん底に突き落とすのね……。もう大丈夫だって思っていたのに……。

 でも……智絵里は杉山を睨みつける。大丈夫、私には《《あれ》》がある。本当はもっと早くにそうするべきだったんだ。今更後悔しても仕方ない。

「じゃあとりあえず十万でいいよ。あとはそうだな……大人になった畑山に満足させてもらおうかな。篠田にいっぱい可愛がってもらってるんだろ?」
「……!」

 思わずかっとなり、殴りかかろうとしたその瞬間、智絵里の腕を誰かが掴む。その腕に智絵里は抱きしめられた。
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