友達、時々 他人
4.女子会
正直、気まずかった。
よりによって、こんなところで鉢合わせるなんて。
多分、お互いにそう思った。
「買い物?」と先に口を開いたのは、麻衣。
「うん。麻衣も?」と聞きながら、私は麻衣の横に立つイケメンの若者に目を向けた。
以前の飲み会で聞いた、二十五歳の後輩だとすぐに分かった。髪がうねっている。
龍也も、同じだろう。
「うん……」と、麻衣が戸惑いながら頷いた。
飲み会の様子では、麻衣が私たちに乗せられて後輩を意識することはなさそうだったけれど、予想が外れたよう。
「今日は偶然が重なるな」と、龍也が言った。
「俺とあきらも、さっきそこでバッタリ会ったんだよ」
そう言って、龍也は親指をクイッと反らせて、来た道を指さした。
私の為だと思う。
私が、私たちの関係を知られるのを嫌がっているから。
「そうなんだ」と、麻衣は少しも疑う様子を見せない。
「麻衣さんは、デート?」
「えっ!?」
麻衣はあからさまに動揺した。
それを見て、隣の若者が少ししゅんとした。
なるほど。
思うに、麻衣はこの若者に押し切られる形で札駅にいるのだろう。
そして、若者は麻衣が自分と一緒にいるところを見られて戸惑っていることに、少なからずショックを受けている。
「前に話していた、後輩君でしょ?」と言い、若者に向き直った。
「こんにちは」
「こんにちは」
チラリと麻衣を見る。
麻衣は、私と龍也が良からぬことを言わないかと心配そう。
「鶴本くん……よね?」
「はい。鶴本駿介です」
「麻衣の友達の桑畠あきらです」
「谷龍也です」と、龍也も私に続いて挨拶をした。
道行く人の邪魔にならないよう、どちらからともなく端に寄った。
「二人はどこに行くの?」
麻衣が、鶴本くんより一歩前に出て、聞いた。
「電機屋」と、龍也が答えた。
「え!? 一緒に?」
「ん。目的地が一緒だったから」と、今度は私が答えた。
「あ、そうなんだ」
「ついでに、忘年会の店も決めようかと思って」
龍也に言われて、思い出した。
私と龍也が、忘年会の幹事だ。
「そっか!」
麻衣が、変なテンションで言った。
「じゃ、明日ね」と、私から別れを切り出した。
「明日?」と、龍也が聞いた。
「女子会するの。四人で」
「そうなんだ」
「あ、じゃあ、行こうか」と、麻衣が鶴本くんを見上げて言った。
身長が百五十五センチ程の麻衣は、鶴本くんの肩くらいに頭がある。
私と麻衣は別の方向に歩き出そうとしたが、龍也は違った。