友達、時々 他人
5.伝わらない想い、伝えられた想い




 女子会が終わったら電話をするようにと、メッセージを送っておいた。ちゃんと電話してくれるかわからなかったから、夕方からは女子会のホテル近くまで行って、そのことをメッセージで送っておいた。



 ルールなんてクソくらえだ!



 あきらに届いた勇太からのメッセージは、俺の逆鱗に触れた。

 俺は温厚な人間だ。

 もめ事も嫌いだし、あまりストレスも抱えない。

 が、あきらのことは別だ。

 俺は、大学の頃からあきらが勇太をどれだけ好きだったか見ている。そりゃ、もう、記憶喪失にでもなってあきらを好きな気持ちを捨ててしまえたらどんなに楽かと思うくらい、俺の割り込む隙間なんてなかった。

 だから、俺は気持ちを伝えなかったし、友達としてでもそばにいられたらと思うようになっていた。

 就職して、連絡を取ることもなくなって、告白されて付き合ったりもした。仕事も充実していたし、あきらを思い出さなくなっていたのも、事実。

 このまま、忘れられると思った。

 けれど、大和さんからさなえとの結婚報告を受けた時、真っ先に思ったのは、あきらに会える喜びだった。

 三年振りに会ったあきらは大人の女になっていて、初めて見た時は腰まで、大学では肩まであった髪を結い上げていて、うなじの色っぽさにドキドキした。

 結婚式だから当たり前だけれど、ラフな格好ばかりしていたあきらのドレス姿も綺麗だった。

 それから、たまに集まるようになって、俺はまた、あきらを好きになった。

 けれど、あきらは勇太との付き合いが続いていたし、みんなから『次はあきら?』と聞かれて否定もしなかったから、またも俺は気持ちを押し殺した。

 それから一年ほどして、あきらが入院していると知ったのは本当に偶然だった。

 健康診断で行った病院で、入院患者用のパジャマを着たあきらを見かけた。スッピンで顔色が悪かったけれど、間違いなくあきらだった。

 ゆっくりと歩き、時折腹を押さえていた。

 何の病気かと心配になり、声をかけてみようかと思った時、彼女が婦人科病棟に向かっているのだとわかった。

 心配になった。

 堪らなく心配した。

 だから、あきらのアパートを訪ねるようになった。

 いつ退院かわからなくて、毎日通い、部屋の電気がついているかを確認した。部屋に電気が灯った三日後。俺は意を決してインターホンを鳴らした。

 入院した理由は聞かなかった。

 婦人科の病気なんて男には言いたくないだろうし、話したければ話してくれるだろうと思った。

 半ば無理矢理に押しかけて、一緒に飯を食った。

 二週間後。

 再びあきらが入院した。

 今度は、本人から知らせを受けた。

 俺が訪ねて、留守が続いたら心配すると思ったらしい。

 理由はわからなかった。

 けれど、退院するから迎えに来て欲しい、と頼まれて、俺は迷わず有休届を出した。
< 36 / 151 >

この作品をシェア

pagetop