絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
* * * *

 いつものように買い物をしてから、二人は徳香の部屋に向かう。徳香が鍵を開けて中に入ると、コートを脱いですぐにエアコンのスイッチを入れた。

「やっぱり夜は寒いよね。暖まるまでちょっと待っ……!」

 そう言いかけた時だった。背後から信久に抱きしめられたのだ。突然のことに驚きと戸惑いを隠せなかった徳香は言葉を失う。

「の、信久……?」

 急にどうしたんだろう……。もしかしてそんなに辛かった? そうよ、私だってそうだったじゃないーー徳香は信久を慰めるように、彼の手に自分の手を重ねた。

 冷たい手。早く暖まればいいのにーーだがその時、徳香の耳に思いがけない言葉が届いたのだ。

「……徳香が好きなんだ……」

 徳香の思考回路が停止し、体が硬直する。しかし信久の腕の力は更に強くなる。

「ずっと徳香が好きだった……」
「えっ……ちょ、ちょっと待って……! いきなりどうしたの? それに……信久は長崎さんのことが好きだったんじゃ……」

 必死にもがいて腕から逃れるが、今度は壁際に追い詰められてしまう。互いの呼吸がわかるほどの距離感に、徳香の心臓は早鐘のように打ち始める。

「徳香と初めて話した時は、本当に長崎さんが好きだった。それは嘘じゃない。でも少しずつ徳香のことを知っていって、君に惹かれていることに気付いたんだ」
「えっ……だ、だって……リハビリは……?」
「徳香に触れるための口実が欲しかった。ごめん……」
「そんな……」

 長崎さんと付き合った時に困らないようにーーそう思っていたから協力してきた。なのにいきなりそれが嘘だったと言われたら、どこか裏切られたような気持ちになる。
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