絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
* * * *

 ショッピングモールから歩いて百メートル程の場所にあるマンションが信久の自宅だった。

 彼に手を引かれてマンションに入り、エントランスの角を曲がってすぐ目の前にあるエレベーターに乗り込む。信久が二階のボタンを押すのを見て、徳香は口を尖らせた。

「こんなに近いなら、家に呼んでくれたって良かったじゃない」

 エレベーターのドアが開き、廊下を右方向へ歩くと、突き当たりの部屋の鍵を開けた。そして扉を開けると、徳香を中へと促す。

「だって……一人暮らしの男の部屋に呼んだりしたら、下心があるみたいじゃない?」
「相手は信久だし、別にそんなふうに思わないけどなぁ」

 短い廊下を抜け、信久が灯りをつける。明るくなった部屋の様子が目に入った。モノクロの色合いとパイプ材の家具が基調となった、シンプルな信久らしい部屋だった。

 壁際の書棚には、映画関係の本やDVDが大量に並んでいた。徳香は嬉しそうにそこに近付き、コートを脱いで床に置いてからじっくり眺める。

「いいなぁ、部屋にこんなにたくさん置けるなんて。それに1LDKなんて羨ましい……これだけ広いならうちじゃなくても良かったよねぇ」

 徳香は思わず苦笑いをした。すると突然背後から信久に抱きつかれ、徳香は体を硬直させる。

「徳香から誘ってくれたんだよ。だからその言葉に甘えてついていっただけ」
「まぁそうだけど……」
「それに俺は徳香の部屋の方が都合が良かったんだ」
「どうして?」
「……だって部屋が狭い方が密着しやすいから」

 徳香が呆れたような視線を投げかけたものだから、信久は恥ずかしそうにパッと彼女の背中に顔を埋める。首筋に吹きかかる彼の息遣いに、前とは違ったドキドキを感じてしまう。
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