絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜

 あたふたする徳香を無表情で見つめる信久の姿も見えた。

「で、でも久しぶりだし……」
「軽くでいいよ! 怪我したら危ないしね」

 あっ、でもやっぱりやる方向なのね。

「ほら、ちょうどバスケットボールもあるよ」
「いや、それじゃあ怪我しますから」

 期待の眼差しで見られ、徳香はため息をついた。一応スパッツ履いてるし、少しだけなら大丈夫かな……。

「じゃあ……ボールを持ってるフリとかでいいなら、ちょっとだけ……。あの……誰かスピーカーとかありますか? 音楽に合わせたいので……」
「あっ、俺持ってるよ。仕事で使うから持ち歩いてるんだ」

 メンバーの一人がカバンから携帯用のスピーカーを取り出すと、とスマホを連動させようとすると、信久がやってくる。

「俺がやるよ」
「あ、ありがとう」

 スマホを操作しながら高校時代に使っていた音楽を探す。

 どうしよう……さっきストレッチはしたけど、ちゃんと体が動くかな……。しかも振りつけもちょっと曖昧。まぁ適当に、無理しないように、軽〜くやれば大丈夫かなーーそう考えながらも、緊張と不安で胸がいっぱいになっていく。

「大丈夫か?」

 ここでは絶対に話しかけない信久が、心配そうに声をかけてくれた。

「あ、うん、大丈夫。なんかとんでもないことになっちゃったなぁって思って……」

 なんとなく周りの空気に流されてしまっていた徳香は、信久が心配してくれたことで、ようやく本音を吐露することが出来た。

「今からでも断れば?」
「ううん、大丈夫だよ。ありがとう」
「そっか。それなら無理と怪我だけはしないようにね」

 信久の言葉や徳香の気持ちを落ち着かせてくれる。持つべきものは友だちね。よし、当たって砕けるつもりでやってみるか。

 徳香は拳を握りしめると、自分自身を奮い立たせた。
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