絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜

 そんな杏の姿を目で追っていた時だった。徳香はコートを挟んで向かい側で、カメラを構えている男性と目が合った。

 三ヶ月前、徳香と同時期にこのバスケ社会人サークルに入ってきた松重(まつしげ)信久(のぶひさ)だった。

 他のメンバーがTシャツに短パンなのに対し、必ずと言っていいほど信久は長袖長ズボンのジャージの上下、そして眼鏡。

 それにバスケのサークルなのに、
「俺は記録係で」
と言ってバスケにはほとんど参加しない、変わったひとだった。

 だがメンバーたちは気にするどころか、『面白い奴が入ってきた』と一目置かれる存在となっている。

 徳香は信久と特に接点がないため会話をしたことがなかったが、最近になって彼がこのサークルに入った真意がわかったような気がしていた。

 修司を見ていると、何故か彼とよく目が合う。しかも修司が杏のそばにいる時が多い。それはつまり彼がファインダー越しに杏を追いかけている証拠なのだ。

 もうバレバレじゃない。彼はきっと長崎さんが好きなんだーー好きな人を好きになることほど、不毛な恋はないだろう。まるで自分がもう一人いるみたいな気がして、親近感が湧いていた。
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