絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
恋も練習が必要?
 徳香が一人暮らしをするアパートは、四世帯だけの白くてこじんまりとしたものだった。

 タクシーから降りた二人は、建物の中央にある階段を昇って左側にあるドアの前に立つと、徳香がカバンの中から家の鍵を取り出してドアを開ける。先に徳香が中へと入り、信久はその後についていく。

 玄関を入ってすぐにキッチンと冷蔵庫があり、つり戸棚には小さめの調理器具が並んでいた。徳香がお弁当や食事を作っている姿を想像して、信久はつい口元が緩んでしまう。

 ワンルームの部屋に入ると、中にはベッド、テレビ、テーブルが置かれ、部屋のインテリアはグリーンにまとめられている。

「荷物はその辺に置いておいてね」

 信久は少し悩んでから、テーブルの脇にカバンを置いた。座るのは早い気がして、立ったまま部屋を見渡した。ギンガムチェックのカバーがかかった掛け布団を見ると、今度はベッドで眠る徳香を想像してしまい、表情を見られないよう天井に視線を移す。

 この部屋にいると、徳香の姿を妄想して心臓が暴れだす。何度も深呼吸を繰り返し、ようやく気持ちを落ち着け、再び部屋へと視線を戻した。

 きっとベッドに寄りかかってテレビを観てるんだろうな。ただ思ったよりもDVDやブルーレイのディスクは見当たらなかった。というのも、信久の部屋の大半をDVDが占めていたから、同じ趣味なのに雰囲気の違いに驚いた。

「映画観ようって言ってたけど、DVDとかないの?」

 部屋を眺めながら、キッチンにいた徳香に声をかける。

「ないよ。ほら、うちの部屋って狭いじゃない? 物を増やしたくないから、今はネットで映画観てる」
「なるほど」
「でもお気に入りはテレビ台の引き出しに入ってるよ」

 信久はテレビ台の前にしゃがみ込むと、引き出しを開けた。すると中にはミニシアター寄りの映画のDVDが三十枚ほど入っており、見た瞬間に心が躍った。
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