絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
「い、いきなり何……?」
「二人でいる時に、こうやってバッグハグってやっぱり嬉しいもの?」
「えっ⁉︎ な、なんで……」
「いやさ、ネットに書いてあったんだよね。女性がされたら嬉しいことって。その中にバッグハグってあった」
しれっと言ってのける信久の腕から懸命に逃げようとするが、彼の力が強くて振り解けない。しかもマグカップを持っているため、こぼさないように注意しなければならなかった
「ねぇ、離して……こぼれちゃうから……」
「じゃあ教えて。やっぱり嬉しい?」
「そ、そりゃ好きな人にされたら嬉しいよ! でも……友達にされると正直困る……」
「なんで? だって俺にはドキドキしないんだよね? リハビリ手伝ってくれるって言ったじゃない」
「でも……! 信久がやることって、私には全部初体験なんだもん……この間は恋人繋ぎで今日はバッグハグ? もう心臓保たない……」
恥ずかしそうに徳香が呟くと、信久の言葉には驚きに近いニュアンスを感じる。
「えっ……初体験? だって彼氏いたって……」
「あのね、そういうことをしない男の方が多いんだから! この隠れ肉食系が!」
「……なんだ、それなら言ってよ。俺だって考えてリハビリするからさ」
「なっ……⁉︎」
もうしないと言うと思ってたのに、まだ続ける気⁉︎ 開いた口が塞がらなかった。
「そっか、徳香は初めてだったのか。それは申し訳ないことをしたなぁ」
そう言うのに、腕の力は緩めてくれない。耳元に感じる信久の吐息に、徳香の力が抜けていく。
「……ねぇ、これって本当にリハビリ?」
「うん、もちろん」
「ただ私をからかって楽しんでるとかないよね? それなら本気で怒るよ」
「そんなわけないじゃないか」
信久はそう言うが、胡散臭さは消えず、裏がある気がしてならない。
「徳香、なんか甘い匂いがする……」
「やだ……! そういうこと言うのやめて……」
「本音なのに」
「きっとココアの匂いでしょ? あーあ、もう本当になんでOKしちゃったんだろう」
なんとなくイライラし始めた徳香はため息をつくと、マグカップのココアをこぼさないように、信久に力いっぱい肘鉄を食らわせた。
それでも手を離さないので、徳香は諦めて信久に思い切り寄りかかってやった。それが信久を喜ばせているとも知らずに。