絶対的恋愛境界線〜当て馬だってハピエン希望です!〜
 徳香は深呼吸をしてから、ゆっくり口を開いた。

「あの……今日はお時間を作っていただきありがとうございました」

 声が、手が震えるのがわかる。告白するってこんなに緊張するんだ。

「初めてサークルの見学に行った時、目の前でシュートを決めた笹原さんから目が離せなくなって……私一瞬で心を奪われちゃったんです。それからずっと、笹原さんへの想いが消えることはなくて、話をするたびに気持ちは大きくなっていって……」

 あんなに家で練習したし、来るまでに何度も心の中でとなえた。大丈夫。ちゃんと言える。

 徳香はもう一度大きく息を吸い込む。

「私、笹原さんのことが好きです。ずっと好きでした」

 言った。でも返事が怖くて目を瞑ってしまう。

「……ありがとう。そんなふうに言ってもらえて嬉しいよ」

 徳香の耳に、修司の優しい声が響く。

「でも……ごめんね」

 まるで深い闇の底に突き落とされたかのように真っ暗になり、胸に刃物が突き刺さったかのような痛みが徳香を襲う。わかっていた答えだけど、やはり辛かった。

 溢れ出そうな涙をグッと堪えるが、それでも流れ出るものは止めることが出来ない。

「……小野寺さんが好意を寄せてくれていることは気付いてた。でも……ごめんね。実は好きな人がいるんだ。相手は気付いていないと思うんだけど、ずっと片想いをしてる」
「……知ってます。笹原さんの好きな人って、長崎さんですよね?」

 徳香が言うと、修司は驚いたように顔を上げた。

「……知ってたの?」
「そりゃあ見てればわかりますよ」
「……それを知ってて……?」
「はい、だから本当は結果はわかっていたんです……それでもちゃんと伝うようって思って……」
「そっか……ありがとう……」

 その時二人の元へ料理が届く。二人は口を閉ざし、微笑み合う。

「とりあえず食べようか?」
「そうですね」

 話はそれからでも出来る。まずはお腹を満たして、この涙を止めようと思った。
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