お見合い婚にも初夜は必要ですか?【コミック追加エピソード】
「仙台の研究所に二年じゃなくて?」
「三ヶ月」

私はまだよく処理できないまま「???」という顔で高晴さんの顔を覗き込む。高晴さんは非常に気まずそうというか、恥ずかしそうに言うのだ。

「どうやら、向こうとこちらで行き違いがあったらしい。新人の育成と研修のため、最初から仙台支社研究所は三ヶ月という条件で俺の出向を希望していたそうだ。現地で聞いて、さっき本社でも確認してきた」

それが東京の彼の職場には二年の出向と伝わっていたということ? 高晴さんどころか東京の同僚はみんな二年の出向だと勘違いしていたってこと?

「つまり高晴さんは?」
「三月から出向して六月の頭に帰ってくる予定です」
「は~!!」

安堵と脱力のため息をつき、私はその場にへたり込んだ。慌てた高晴さんが腕を捉えて助け起こしてくれる。

「なんか……ごめん」

恥ずかしそうな高晴さん。
言いたいことがわかる。別れを惜しんであんなに熱く抱き合い、愛を誓い合ったというのにね……。
まさか三ヶ月だとは。いや、充分寂しいけど、なんていうか二年と三ヶ月では重みが違うというか……。
先日の涙と愛溢れる晩を思いだし、ふたりとも赤面が止まらない。私はふへっとしまりなく笑った。

「えっと、私は嬉しいよ。離れ離れの期間、ぐーっと短縮されたんだもの」
「雫……」

高晴さんが嬉しさと決意からか顔をぎゅっとしかめ、私を抱き締めた。私の手からお土産をさっと取り、玄関に置きっぱなしのスーツケースの上に置く。それから私の背に手を添え直し、お尻の下に腕を入れ軽々と抱き上げた。
わわ! いきなり男らしく持ち上げられてしまった。
私は慌てながら彼の顔を見下ろす。

「俺も、雫と離れる時間が短くなってすごく嬉しい」

高晴さんが情熱的な瞳で私を見つめる。胸がキュンとするような愛情溢れる表情だ。

「ふたりのこれからのこと、赤ちゃんのこと、もう一度きちんと話そう」
「うん!」

私たちはたっぷり甘いキスを交わし、笑い合った。私たちはまたここから始まる。夫婦として、家族として。 




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