秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「千香」

 振り返った大雅の手に握られた、〝なにか〟を凝視する。

「二人目は、もう少し後でもいい?」

 一瞬なんのことかわからず、首を傾げる。

「あっ」

 大雅の手にあるものが避妊具だと気がついて、ようやく理解した。

 相変わらず用意がいい彼に抗議の視線を送ると、私の言い分を察したのか、大雅が気まずそうな顔になった。

「ほら、今回もまた新しいやつでしょ」

 もう片方の手で、雑に開けられたビニールの包装がぶら下がったままの箱を掲げてくる。明らかにさっき開封していたようだし、そこは彼の言う通りだとうなずく。

「前に言った通り、あの夜から今まで、誰ともそういう関係になっていない。その……」

 言葉を濁す大雅に、ここは逃がすわけにはいかないとじっと見つめる。夫婦になったのだから嘘も隠し事もなしにしてほしい。

「千香にもう一度会えたら、絶対我慢できないって確信してて。願掛けみたいなものなんだ。もう一度、そういう関係に戻れるようにって新しく買って持ち歩いてた」

 彼が照れ臭そうにするから、今さながら私まで恥ずかしくなってくる。まさかの理由に、思わず視線を逸らしてしまった。

 その直後、ハッとした大雅が慌てて付け加える。

「で、でも、体が目的とか、そういうわけじゃないから。そりゃあ、もちろん好きな人を前にしたら触れたくなるのは当然で……だからと言って、しなくても千香といられるだけでも幸せで……」

 熱意溢れる様子で前のめりに語られるけど、その一言ひと言が恥ずかしすぎる。

「わ、わかった。信じてるから。そもそも本気で疑ったわけじゃないの」

 必死な様子からも、彼の気持ちは嫌というほど伝わっている。
 ただあまりにも準備のよい彼に、信じていながら釘を刺しておきたかったというか、万が一彼が自分以外の女性となんてあらぬ想像をしたら、苦しくて責めずにはいられなかったのが本音だ。
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